DC観光➄🇺🇸 葛飾北斎をアメリカで堪能する
当初の目的であった「呪われたダイヤモンド」を見て(DC観光➁を参照)、議会議事堂もホワイトハウスも訪れて(DC観光➀、DC観光➂)、人気のスミソニアン航空宇宙博物館(DC観光➃)も制覇…と事前に考えていたワシントンD.C.で行きたかった場所は一通り行き尽くしてしまったあとの観光5日目。
他にはどんな施設があるだろうか?と地図を見ていて目に止まったのが、この日訪れたフリーア美術館でした。練られたプランではなく思いつきで観光した5日目ですが、思いがけず印象に残る素敵な一日となったので、王道ではないかもしれませんがおすすめのコースです😊
Freer Gallery of Art (フリーア美術館)
11時という遅めの時間に着いたにも関わらず、人は並んでおらずスッと入れました。
他の博物館と違って名前が "National (国立)" から始まりませんが、こちらもスミソニアン協会によって管理・運営されているスミソニアン博物館群のうちの一つです。すぐ隣に建っているArthur M. Sackler Gallery (アーサー・M・サックラー・ギャラリー)と合わせて Smitonian's National Museum of Asian Art (スミソニアン国立アジア美術館) となります。
フリーア美術館は、1923年にスミソニアンキャンパスにおける最初の美術館として一般に公開されました。しかしその歴史は遡って1906年、チャールズ・ラング・フリーア氏が彼のアジアとアメリカの膨大なコレクションを国に寄付したところから始まります。この贈り物は、前年にフリーア氏がセオドア・ルーズベルト大統領に提案していたものです。
フリーア美術館は、フリーア氏自身の言葉で "modern work with masterpieces of certain periods of high civilization harmonious in spiritual suggestion (撫子訳: 現代の作品と、宗教的連想において調和した特定の高度な文明時代からの傑作)" を結びつけるそうです。
上記は公式サイトを筆者なりに訳したものなので、至らないところがあったらすみません💦 もっと詳しく知りたい方や原文をご覧になりたい方は、こちらから⇩
またフリーア美術館を語る上で欠かせないのが、その展示作品の全てが門外不出であるということ。フリーア氏はコレクションを贈る際の条件として「フリーア美術館以外での作品の展示」および「展示目的で他から借りること」の禁止を掲げていて、現在も彼の言葉は守られ続けています。ゆえに、全てここでしか見ることの出来ない貴重な作品なのです。
中に入るとすぐに階段があって、上った先には庭的な空間が見える大きなガラス窓が。
外から見るだけでも十分綺麗なのですが、ガラス戸を通ってこの美しい庭に出ることも出来ます。燦々と日が降り注いでいて、とっても優雅な眺めです。美術館や博物館というよりは、まるでどこかのお屋敷みたい。
館内マップにはエリアごとに数字が振られており、どこを見学してどこがまだなのかが分かりやすいので訪問者に親切だと思いました。
1番を探して階段を降りたらなぜか20番に行き着いてしまい、手近だったその場所から見て回ることにしました。シリア北部の都市、ラッカからインスピレーションを受けたという美術品たちです。
立つ場所や当たっている光の加減によってキラキラと異なる見え方をする美しい壺。言葉で形容するのが難しい、この混じり合った色が綺麗でとても好きでした。確実ではないですが、"これはラッカの美術品から着想を得て作られた現代の作品" と、解説文を読んだ私筆者からそういう風に説明された記憶があると母が言っていました。
そして1,2番のブッダの展示エリアへ。
写真を注意深く見ていただくと分かるかもしれないのですが、驚くことに仏像達のほとんどはガラスケースに入っておらず、むき出しの状態で展示されていました。装飾品や器の写真にはどれもガラスの反射する様子が見て取れるのに、2枚目と4枚目の仏像の写真にはそれが無いことが分かるでしょうか?
アメリカの美術館に来て、開放的に展示されたいくつもの仏像を見るというのはなかなかの想定外だったのですが、それよりももっとびっくりしたのが次にご紹介する北斎展です。
葛飾北斎の作品が、5〜8の4つものエリアに渡って展示されていました。2019年の11月23日に始まった Hokusai: Mad about Painting というこの展示はどうやら常設ではなく特別展示のようで、公式サイトによると2020年11月8日までだそうです。
大きな作品が部屋のスペースを贅沢に使って展示されているので、細部までじっくりと鑑賞することができました😊
富嶽三十六景の中の有名な一枚である神奈川沖波裏が、日本の新しいパスポートや2024年発行予定の新しい1000円札の裏面に描かれることが書いてありました。写真にあるサンプルは日本の国立印刷局によってプリントされたものだそうです。新紙幣のデザインは全く知らなかったので、まさかこんな形で知るとはびっくりしました…😦
こちらの作品は「雷神」です。作品の解説には、"日本の多くの絵画で雷神は情け深い存在として描かれていたが、北斎はこの神を恐ろしい力を持った獰猛な赤鬼として想像した" とありました。筆者自身も雷神にはどちらかと言えば怖いイメージがあったので、雷神が優しいイメージで描かれた絵が多くあるというのは意外に思いました。
実はこの作品、小部屋のようなところに1枚だけでどーんと飾られていて、圧倒されるような雰囲気が醸し出されていました。
他には北斎の描いた漫画もありました。
この時代に漫画があったことも、北斎が漫画を描いていたことも、初めて知って驚きました。
こちらは、北斎が86歳の時の作品だそう。英語でのタイトルはそれぞれ左から Ascending Dragon、Descending Dragon (訳: 上昇する龍、下降する龍) です。日本語題は不明です、すみません🙇♀️
こちらの作品の解説でも、北斎が他の画家とは違う表現で龍を描いていることが触れられていました。"龍を獰猛な生き物として描く作品が多いが、北斎の龍はしおれて臆病そうな表情をしており、その身体的な強さと滑稽な対比を見せている" とのこと。確かに龍に注目してよく見てみると、なんだか気弱で恥ずかしそうな表情を浮かべています。引きで見ると荒々しくて強そうな龍たちなのに、不思議で面白いですよね😳
こちらは北斎の作品…ということになっているものの、本物かどうか定かではなく議論になっているもの。北斎のずば抜けた人気は相当な数の作品を彼の名と結びつけていたようで、北斎のサインがあってもそれら全てが本物というわけではないようです。これもその中の一つ、ということでしょう。
鍾馗(しょうき)が鬼を鎮圧している様子、だそうです。
こちらも先ほどの龍の画と同様、北斎の最後の10年間に描かれたものです。富嶽百景の中で彼は、110歳まで生きる望みについて話しました。70歳以前に描いた自身の作品についてはかなり批判的だったそうです。
1834年、彼が75歳の時に出版された富嶽百景の後書きを読んで、とても感動したので以下に筆者・撫子による訳を載せます。原文を載せたくて探してみたのですが、引用元が確かなものを見つけられなかったので、わたしなりに意訳することにしました🤔 (一度英訳されたものを再び日本語に訳す、ってなんだか変な感じ…)
"6歳の頃からものの形を写生する習慣があり、50歳から沢山の作品を描いてきた。しかしながら70歳より前のわたしの絵は、現実を写し出せていない。
73歳になって、生きとし生けるものの体格と植物の生命力を絵に残すことに、部分的に成功した。それゆえ86歳からは大きな進歩を遂げ、90歳ではもっと進歩した。100歳まで到達することはわたしの最大の願いであり、その時わたしの作品は実に素晴らしいものになるだろう。もしわたしが110歳まで生きたとしたらその時は、どの点もどの線もみな、命を吹き込むかのように描かれるだろう。"
平均寿命が50歳とも言われる江戸時代に90歳近くまで生き、絵を描き続けた北斎が110歳になってから描く絵を見てみたかった、と心から思いました。どの作品を見てもひたすらに「すごい」と、葛飾北斎という人物と作品の凄さに圧倒された時間でした。まさかアメリカでそれを再確認することになるとは思いもよりませんでしたが、じっくり北斎作品を堪能できて本当に素晴らしかったです✨
北斎展の期間に間に合うようでしたら是非。人があんまりいなくてじっくり見られるのも良いですし、日本の作品について英語で書かれた説明書きを読むのもとても興味深くて面白いです☺️ ちなみに作品は3ヶ月ごとに一部入れ替えているそうなので、本記事でご紹介した作品とは違うラインナップが見られるかもしれません👀
10番からは西洋系の絵画を中心とした、Dewing’s Collectionです(Dewing氏が集めたコレクション)。
絵は額縁にこそ収まっているものの、ガラスケースには入っていませんでした。
西洋系の絵画ばかりの中で異色ですが、こちらもDewing氏のコレクションの中のひとつで、作者は喜多川歌麿です。
背景が紫色の壁、というのは非常に珍しい気がしました。はじめは "どうして紫なんだろう?" と不思議に思っていたのですが、青や緑などの寒色系の絵が多く飾られていて、紫の壁に似合っているようにも感じました。
そしてこちらは、足を踏み入れた瞬間に目がハートマークになってしまうような素敵な空間だったThe Peacock Room (孔雀の間)。
元々は建築家トーマス・ジェキル氏によってデザインされた、英国の海運の大御所フレデリック・R・レイランド氏の応接室だそうです。(Wikipediaにはレイランド氏の「食堂として使用されていた」とあるのですが、公式サイトには "drawing room" と書かれており、これは日本語で客間や応接間の意味です。)
レイランド氏の中国の磁器コレクションと、ジェームズ・マクニール・ホイッスラー氏の絵画 "Princess from the Land of Porcelain" を収容し、ホイッスラー氏はこれを"Harmony in Blue and Gold: The Peacock Room" と名付けました。ちなみにホイッスラー氏はフリーア氏と同じような趣向の美術品を収集していて、美術館出資にも協力しています。
レイランド氏の没後、フリーア氏はまず絵画を、後に孔雀の間を手に入れてデトロイトの自宅に設置します。その後、ここフリーア美術館で展示されるようになったそうです。
緑地に金の絵の具が美しく映えていて、一面に飾られた青磁器もとっても綺麗です。ただそこに居るだけで何だかとってもゴージャスな気分になれる、華やかで贅沢な空間でした💎
ここからは韓国や中国からのコレクションです。
昔の壺や器、食器を見るのって面白いですよね😊 色使いだったり凝ったデザインだったり…
やっぱり剥き出しに展示されている仏像と、歴史の教科書に載っていそうなナイフなど。実はここまで見た後、次にご紹介するスミソニアン協会に行ったので一度退出しています(お腹が空いてきていたので…😂)。
入場してから3時間半ほど経っていましたが全ては見学し終えていなかったので、スミソニアン協会での小休憩後に再度入場して残りを鑑賞しました。
これはWine horn (角杯)、これでワインを飲むそうです🍷 中央と右の猫らしき動物が険しい表情をしているのに、左のライオンは気弱そうな顔をしているのが面白いです。
下の階に降りるほど展示されている作品数も少なくなっていって、なんだかちょっぴり尻すぼみ?な感じもしましたが、建物の構造がカッコイイと思いました👀 経路が少し複雑で下に降りる階段がなかなか見つからなかったり、上がってきたら構造上必ず通らないといけない部屋があったりと、ドラゴンクエストのダンジョン探索をしている気分になりました😆 少々迷いましたが…笑
ドラクエのダンジョンにおいて最もありがたい存在、HP&MPを全回復してくれる泉… みたいなアート作品。美術館の最深部にあった、という点がより一層ドラクエ感を増している気がします😂
スミソニアン協会本部
しっかり朝食をとってから出て来たものの、美術品をしばらく鑑賞していたら軽くお腹が空いてきたので、小腹を満たせる場所を探して、ここにたどり着きました。
フリーア美術館と目と鼻の先の距離にある、スミソニアン協会本部です。
歴史ある大学校舎のような佇まいです。
中に小さなカフェがあって、サンドウィッチやパン菓子類が売られていました。
動物の剥製など、展示物もありました。ここはちょっぴりロッジや避暑地の別荘みたいな内装です。
澄み渡った青空の影響もあってか、建物の雰囲気といいお庭といい、現実のものではなくてファンタジーの世界みたいな景観でした。妖精や魔法使いが曲がり角から現れても不思議じゃない、とファンタジー好きな筆者は思ってしまいました。
ともあれ、この素敵な建築とお庭は散策する価値がありますので是非。スミソニアン博物館群の中心的な位置であり、DC観光➁でご紹介した自然史博物館の真向かいに建っています。
国立アメリカ歴史博物館
フリーア美術館を満喫して外に出ると、まだ日も暮れておらず時間があったので、斜向かいのアメリカ歴史博物館へ。
その名の通り、「アメリカの歴史」にまつわるものが幅広く展示されています。
1920・30年代のアメリカンアートやファッションに見られる、アートデコスタイルのジュエリーや
モハメド・アリのグローブに、
リンカーン元大統領が暗殺された時に被っていた帽子。
歴代ファーストレディのファッション展示もありました。
色々な視点からアメリカの歴史を知ることができてとても面白かったです😊
そんな中でも筆者が一番心躍ったのが、こちら。
何だか分かりますか?
ヒントは後ろの壁紙に書かれている "Toto, I've a feeling we're not in Kansas anymore (トト、わたしたちはもうカンザスにはいないみたいな気がするの)" です。
正解は…
映画「オズの魔法使い」でドロシー役のジュディ・ガーランドが実際に身につけたルビーの靴
幼い頃からこの映画が大好きなので、実際に映画で使われたというルビーの靴を目にすることが出来て嬉しかったです。彼女の足に合わせて、左右のサイズは微妙に違うそうです。
ちなみに英語ではruby slippersといって、ruby shoesではないのです。同様にシンデレラが舞踏会の帰り際に落としていったガラスの靴も、glass slipper (片足だけなので単数形) であってglass shoe でも glass heel でもありません。日本語でスリッパ、というと室内で履く
こんな形のものを思い浮かべると思うのですが、英語のslipper(s)は足を滑り入れて簡単に着脱できるような、軽くてローカットの靴全般を指します。だから、足をつっこむだけで履けそうなルビーの靴も、帰りしなに脱げてしまったシンデレラのガラスの靴も slipper(s)になるんですね👀 (といっても、ルビーの靴の方はその魔力によって脱ごうとしても脱げなくて、ドロシーは西の魔女に狙われることになるのですが…)
昔の記事 (初日🇬🇧黒と緑の魔女の魅力) で、ミュージカル「ウィキッド」に使われている曲が好きという話をしたのですが… 覚えてくださっていた方はいらっしゃるでしょうか?2年ほど前に書き始めたものの未だ完結していない、あのヨーロッパひとり旅シリーズの初日の記事です。2020年中に書き上げたいと思います…
何にせよオズの魔法使いもウィキッドも好きなので、本物のルビーの靴を見てテンションが上がった結果
赤いスパンコールが華やかな、このタンブラーを母に買ってもらいました😆 There's no place like home という劇中の台詞 (吹き替え版では「やっぱりお家が一番」だったと思います)が書かれています。
退館時間が迫っていたので途中まで見学したところで引き返さなくてならなかったのですが、周っていて特に楽しかったのがこのエリア、America on the Move (動き続けるアメリカ)。
アメリカの歴史における輸送手段の役割と変遷を紹介する電車や車の模型がたくさん置いてあって、その時代ごとの街並みも再現されているのでタイムスリップしたかのように感じました😳
筆者の住むシカゴの電車や、駅もあって心の中で静かに盛り上がりました🤣
このMadison&Wabashというのはシカゴに現在もある駅です💁♀️ ちなみに手に持っているのが前回の記事でご紹介した寄付の一環、1ドルで買える館内マップです。英語のものだけでなく、日本語のものもありました😊
…というわけで、ワシントンD.C.観光5日目でした。DC観光シリーズも残すところあと一回、最終回となる次回記事も是非読んでくださいね😘
コロナウィルスの猛威はまだ収まらないようですが、皆さまお身体にお気をつけて🍀
撫子💐
🌹本日も読んで下さり、ありがとうございます🌹
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